結論から言えば、ビデオやテープに収めた映像や音声は、たとえ相手に黙って録ったものでも、全て証拠能力を持っていると裁判で認められている。係争に発展するようなトラブルがあった場合、映像や音声を証拠として裁判所に提出する事は、極めて有効な方法だといえる。
実際、私が関わった裁判でも、録音テープが効果を発揮した事がある。その事案はこうだ。
依頼人は、ある証券会社の担当者から勧められた未公開株を買ってトラブルになった。
担当者は「伸び盛りの会社であり、株式公開すれば株価はこのようになる。今買えばかなりの儲けになる」と具体的な数字を挙げて購入を勧めたという。確実に儲かるならばと依頼人は一億円の多額の資金を出して、その株を買った。
ところが、値上がりするどころか、株式公開そのものが無くなってしまい、買った株の価値は大幅に下がり、かなりの損失を抱えてしまった。依頼人は担当者や証券会社などに損害を受けた事を訴えて解決を求めたが、一向に埒が明かずにいた。
そこで私のもとに相談にやってきた。株価がいくらになり、いくら儲かるといった勧誘方法は明らかに違法(金融商品取引法三八条)だ。そこで私は証券会社に対して、一億円の損害賠償を起こす事にした。
しかし、いきなり訴訟に持ち込む事はしなかった。依頼人に対して未公開株を勧めた担当者に会う、あるいは電話で話をするようにしてもらい、勧誘を受けた際の会話内容がどんなものだったか再現させ、その際に、必ず会話を録音し、メモも取るようにしてもらった。もちろん、相手に話を録音すると断れば、警戒されて、会う事を拒む可能性がある。会ったにしても、勧誘時の話がどんな内容だったかは言を左右にしてとぼけてしまうだろう。そこで、全て隠し録りで行う事にした。
相手は、株価や儲けがいくらになると話した事を認めた。しかし、一度だけでは、裁判になった際にうまく言い逃れされてしまうかもしれない。二度、三度同じ話をさせて、会話はすべてテープに収めた。
録音は都合20回くらい行っただろうか。ゆきすぎた勧誘があった事を担当者が何度も認めている。これで勝てると確信し、初めてその証券会社を相手に訴訟を起こした。
録音・録画の他に会話メモも重要な証拠に
裁判が始まると、相手は陳述書を提出してきた。要約すれば、「将来性はあるとは言ったが、株価がいくらになり、これだけ儲かるとは言っていない」との内容だった。こちらは、テープに録った会話内容を書面に起こして裁判所に提出した。相手の弁護士は「隠し録りは汚い」と非難してきたが、では、嘘をついて裁判を有利に進めようとするのと、どちらが汚いのかということだ。
結局、裁判官は和解を勧め、我々も先方もこれに応じた。最終的に、証券会社が依頼人に未公開株を購入した代金全額を返済する事で合意した。
裁判になると、言った、言わないの水掛け論になるケースが往々にしてある。どちらかが嘘をついているということだが、それを避ける意味でも録音や録画は有効だ。また、会話メモも重要な証拠となる。
だが、裁判で有効な証拠となる以上、相手も録音をしている場合がある。また、相手が有利に事を運ばせようと、都合のいい会話部分だけを証拠として出してくる場合もある。そんな事をさせない為に、こちらも録音しておく必要がある。後は、裁判になった時、どのタイミングでそれを提出するかという事になるが、これは弁護士と相談してほしい。