年末調整や確定申告の時期に、税務署や区役所職員を名乗る人物から「税金や医療費等を返還します」「今日が手続きの締め切りです」「ATMで手続きができます」などといった電話がかかってきた経験はありますか?
これは電話で税務署員名乗り、税金の還付をATMで受け取れると偽って詐取する「還付金詐欺」と呼ばれる振り込め詐欺の手口です。消費税の戻し税や消えた年金を回復させる手数料が必要だとATMに誘導し、税務署の口座から被害者の口座に移す操作と偽り、加害者の口座への振込みを行わせます。金銭を受け取るにあたっての障害があることを提示し、一定額を支払えばその障害が除かれるという状況を演出して振込みを実行させる方法は、古典的な詐欺の手口です。最近では、民間企業職員を名乗り、「携帯電話代やクレジットカードの決済金を口座から多く引き落としたので差額を返還する」というパターンも見受けられます。
これらは年金問題が社会問題として注目を集めた07年頃から見られるようになった手口で、社会保険庁員のふりをして「年金記録を改めた所還付金が発生した」と言ったり、年末調整や確定申告の時期に併せて税務署員を装い「税金の還付金が出た」と騙るなど、時節の話題に合わせた詐欺が仕掛けられています。この種の「手数料を支払えばお金が受け取れる」という手口は還付金詐欺と呼ばれ、オレオレ詐欺や架空請求詐欺の被害が減る一方で、被害が増加していきました。詐欺師達は日々のニュースや新聞記事を入念にチェックし、年金問題など話題になっている事柄を筋書きに取り入れることによって虚言の信憑性を高めるように工夫をしているのです。08年の定額給付金を巡る議論の中で、給付金を銀行口座振込みにする案が出されたこともATMへの誘導を容易にしているのではないでしょうか。
実際に被害に遭ったOさんに話しを聞いてみました。
「税務署署員に成りすました男から、年末調整の還付金を返却すると連絡が有りました」
自営業を営むOさんは、不況の煽りから前年度の収入が激減し、多くの還付金が戻ってくることが頭にあったといいます。しかし、これまで還付金があった年には手数料などが必要だった事はありませんでした。不審に思ったOさんでしたが、「出納の担当に回しますのでこちらの番号へおかけ直し下さい」と加害者の仲間に電話を掛けなおすよう指示があったことで、相手が公的機関であるかのように錯覚をしてしまったそうです。男からは、「通常の手続きでは受け取るまでに日数が掛かりますが、ATMを介して手数料をお振込みいただく方法であれば即日受け取れます」と説明を受けました。すぐにはお金を必要としていなかったOさんでしたが、「もうすぐ期限が過ぎて還付の権利が失効してしまいます」と言われた、その足で手数料を振り込んでしまったそうです。
この手の詐欺への対策ですが、まずはATMでは還付金を受け取れないことを知っておく事が一番の予防策です。そもそも、還付金の支払いで税務署からATM操作を求められる事は有りません。携帯電話を持ってATMに行くように言われたらそれは還付金詐欺だと思って間違い有りません。自宅の固定電話に、そのような電話があった際には「携帯電話を持っていない」と主張すれば、犯人は被害者を誘導する手段を失うので効果的でしょう。電話ではなく文書による手数料振込みの指示があった場合、そこに記載されている公的機関の電話番号を信用せず、自分で電話番号を調べて、そちらへ連絡をいれてみる必要があります。また家族や知人に相談してみるのもいいでしょう。離れて暮らす年老いた家族が居る場合、その人の銀行口座の引き出し可能金額をあらかじめ低く設定しておくのもいい方法だと思います。また銀行にもATM周辺に携帯電話の通話を妨害する機器を備えるなど、犯人が被害者への指示を行えなくするような対策が求められます。
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