上司として絶対にやってはいけないのは「うつ病になるのは心が弱いため」と決めつけ、「おまえが悪い」などと本人を責める言葉を浴びせることです。まして病んだ部下を追い込んで辞めさせようとするなど、もってのほかです。
過去の判例で主任に昇格した30代の男性社員が過労とパワハラからうつ病になり、自殺に至ったものだが、裁判所は上司が「おまえなんかいてもいなくても同じだ」「主任失格」などと、感情的な発言を繰り返したことを重視しています。結果は一審二審とも、上司の対応が厳しい指導の範疇を超えたパワハラとみなされ、自殺の原因が会社の業務にあったと主張した原告側が勝訴しました。
また別の判例では、過労によって心身に不調をきたしているにもかかわらず、心ない発言を投げつけられた40代の男性が自殺している。この裁判では、業務を軽減してほしいと数度にわたり訴えた男性を、直属の上司が逆に「逃げてどうするんだ」と叱咤し、さらに仲入をした役員が、社長や役員の出席する懇親会のスピーチで男性のことを「頭がいいのだができが悪い」「何をやらしてもダメだ」などと酷評したことが重視され、原告が勝訴しています。
また裁判にならないまでも、うつ病で休職したところ会社が復職を認めず解雇に踏み切った。あるいは休職自体を認めず、自主退職するよう迫られたと訴えて、法律事務所の門をくぐる例はすくなくありません。しかし、業務に起因する疾病により休職していた期間の解雇は法律上無効なため、こうした会社側の対応は大いに問題があるといえます。
長時間労働が原因で発症したうつ病を理由に解雇された人が、その違法性を問うた訴訟では、解雇を無効とし、会社側に未払い賃金などを支払うよう命じる判決が下されています。これはうつ病による解雇の違法性を明言した初の判例として、今後の労働問題に大きな影響を及ぼすと考えられます。
近年、成果主張の導入と人手不足によって、多くの会社では社員の過労が慢性化し、非常にストレスのたまりやすい環境にあります。働く喜びや満足感が極めて得にくい現在の職場環境では脆弱か否かにかかわらず、一定数の人たちが精神疾患を発症するのがむしろ当然でしょう。半面、精神疾患への理解は十分とは言い難いのが実情です。そこで部下があえてうつ病を打ち明けてくるというのは、よほどのことなのである。
したがって管理者は部下がうつ病を打ち明けてきたら「やはりうちの会社もそうか」と思ったほうがいい、そして本人の主治医の意見を尊重しながら産業医、人事部に相談して適切な対応をするとともに、うつ病を生みにくい体質に組織全体を変えていくための方策を真剣に検討するべきでしょう。これは部下一人の恨みではなく、「明日はわが身」ともなる深刻な問題なのです。
また、労働者自身も自己防衛策として、会社の就業規則に目を通し、疾病による休職や復職の権利がどのように保証されているのかよく理解しておくことです。
