違法行為の命令【いほうこういのめいれい】

口頭でのやりとりは一字一句正確にメモする。

食品偽装、脱税、粉飾、再生紙や耐火壁などの製品のデータの改ざんなど、企業による不正は組織的に行われることが多い。「違法行為とは知らなかった」と言う証言も多いが、実際は不正をうすうす知っていながら、上司に命じられてやむをえず続けているというケースがほとんどである。

もし、あなたがそんな状況に置かれた実務担当者だったとしたら。まずは、次の二点をはっきり認識しておく必要がある。

第一に、たとえ上司に命じられて行った不正であっても、現行の法律では実行行為者、つまり現場の実務担当者が主犯であり、真っ先に逮捕され罪も一番重いということ。

実際に行った担当者、担当役員、社長などと上に行くほど逮捕、起訴の可能性から遠ざかる仕組みになっている。逮捕されてから「法律を知らなかった」などと言ってもまず取り合ってはもらえません。

第二に、あなたが逮捕され、新聞やテレビで氏名が報道されると、家庭は目茶苦茶になるという現実。私達は多くの実例を見てきたが、子供は登校拒否になり、配偶者は食事もノドを通らず、一家は転居を余儀なくされ、人生取り返しがつかない場合がほとんどだ。 

不正行為を命じられたり、自分の業務が不正なものだと知ったとき、あるいは不正かもしれないと感じたときは、それを止める行動に出るべきだ。よく、「上司には逆らえませんよ。クビになってしまう」と言う人がいるが、「解雇」と、前記の「逮捕・人生の崩壊」の深刻さとどちらがいいのか、ギリギリの選択の問題なのだ。

まず上司に「違法行為では?」と意見具申してみる。聞く耳を持たない上司なら、社長へのメールでの直訴、社内ホットライン、顧問弁護士、監査役などのルートで通告する。それでも「隠せ!」「黙ってやれ」と命じられたら、「この仕事はできません」と就労を拒否する。それを理由に解雇を通知されたら不当解雇だと法廷で争う。そもそも、不正に対して誰も耳を貸さない会社など辞めたほうが良いのだ。

その際、自分を守る上で大切なのは証拠を保存しておくことだ。内部通報したり就労拒否した経過を詳細にメモに残しておくこと。不正な業務を命じられた指示書やメールもコピーや印刷をしておく。メモのポイントは、上司や会社との口頭でのやりとりはカギカッコ付きでメモすること。ある会社の賞味期限偽装事件の担当者は、記者会見で「専務は『こんなに日持ちするんだ、頑張って売れ』と言いました。」と発言した。ただ「賞味期限を書き換えて売るよう指示されました」と事実を述べるだけでなく、一字一句正確に残すことで信憑性が増す。日時や場所もメモし、一定期間、自分が不正と気づかなかった場合ならその理由などもメモしておくこと。臨場感と正確さが窺えるメモなら、有力な証拠となるはずだ。

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