電車が遅れて取引や予定に支障が生じ、取引が潰れたり予定が変更になったときの責任は鉄道会社に請求できるのか?
日常生活の中で鉄道は必要不可欠の移動手段です。通勤、通学はもちろん遅刻が許されない大事な商談、入学試験、就職活動等大事な場面で鉄道を使って移動をする機会は非常に多いと思う。
しかし、人身事故や機械、車両トラブルで電車の時刻が狂う機会は非常に多いのが現状です。このような場合、失った損失を鉄道会社は償ってくれるのか?
鉄道会社に損害賠償を請求する際、法律上可能性があるものとして①鉄道運送約款など契約上の保証責任②民法415条、416条の債務不履行責任③民法709条の不法行為責任の3つが挙げられる。
①の鉄道運送約款など契約上の補償責任は鉄道運送約款に「利用者を目的地まで到達させる義務はあるが出発・到着時刻を保証するものではなく、損害賠償できない」と明記されている。ただし一切補償できないわけでなく、「特急・急行が2時間以上遅れた場合は特急・急行料金が全額を返済する」「列車が遅延したため接続駅で接続予定の列車等の出発時刻から1時間以上にわたって目的地に出発する列車等に接続を欠いたとき、または到着時刻に2時間以上遅延したときには払い戻しができる」と定められている。②の民法上の債務不履行責任については、鉄道会社に別個に「○○時の飛行機に乗りたいから必ず到着時間を予定通りの時間にして欲しい」といった契約を交わせばともかく実際には鉄道約款が定められている以上鉄道会社に責任を問うことは難しいと言われている。③の民法上の不法行為責任は鉄道会社が故意・過失によって乗客の権利を侵害しているわけではないのでやはり責任を問えない。つまり、鉄道会社が電車を遅延させてもそれによって失った物に対して責任は問えない、という結論になる。筆者自身の経験だが以前旅行会社に勤務していた時の話である。海外旅行に向かうOL2人組が横浜から成田空港までの特急列車に乗ったが、途中で落雷のため電車が停まってしまった。運悪く停まった場所が田んぼの真ん中で電車から降りてタクシーを拾うこともできない。一向に復旧する見込みがなく携帯電話で車内から泣きながら電話が掛かってきた。急ぎ成田空港に連絡を入れ、成田空港の担当者もよく対処してくれたが、国際線の場合各航空会社ごとに空港の使用時間が決まっており安易に変更できない。そのための補償を鉄道会社が取ってくれないため、航空会社もぎりぎりまで待つことはするが電車が復旧するまで待つようなことはしないのである。結局、3時間後に復旧したがすでに飛行機は出発しており、旅行に行けないばかりか当日キャンセルということで旅行のキャンセル料も高額だった。鉄道事故のせいで彼女達にとっては一生消えない傷が残ったと思う。
結局、鉄道会社は全ての責任を鉄道運送約款で責任を逃れているが業客は「電車に乗ったことが契約に合意したものとみなされ、その時点で約款記載の事項に縛られる」のである。つまり乗車券購入時が契約時とされ、約款に合意して乗車した以上遅延しても責任は問えないのである。
では、自殺者によって電車が停まってしまい、大事な行事に遅れてしまった場合、自殺者に損害賠償請求できるのか?この場合自殺者は電車に飛び込めば、電車が遅延することは分かっているので民法709条の不法行為の要件である故意が生じます。しかし、実際には遺族は相続放棄ができるので損害賠償請求することは現実的ではありません。
結論として、電車が遅れた場合の補償は皆無といえる。大事な行事を予定している場合は早めに到着するように予めスケジュールを組んでおき、最悪の場合に備えてタクシー代を用意しておく等の用意が必須になるでしょう。