相続のトラブルを未然に防ぐには「遺言」が効果的だ。ただ方式や内容によっては、遺言がかえって紛争の種になる場合もある。それを避ける為に、基本をきちんと押さえておきたい。
遺言には複数の方式があるが、一般的なのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」。自筆証書遺言は、文字通り被相続人が自筆で書いた遺言で、執行には家庭裁判所の倹約が必要。一方、公正証書遺言は、遺言内容を公証人に伝えて作成し、原本は公正役場に保管。通常は公証役場で作成するが、公証人にきてもらって作成する事も可能だ。
どちらも法的な効力は変わらないが、よりトラブルが少ないのは公正証書遺言のほう。公正証書遺言は、公証人は被相続人の意思能力を確認して作成する。それでも被相続人の意思能力を巡って訴訟になるケースもあるのだから、自筆証書遺言はなおさらリスクが高い。証人2人と手数料が必要になるが、確実を期すなら公正証書遺言がベターだ。
遺言作成時には方式だけでなく、内容にも気を配りたい。まず注意したいのは「遺留分」だ。相続人の法定相続分の半分を遺留分といい、たとえ遺言でも侵害出来ない。例えば法定相続人が妻一人子二人の場合、妻二分の一、子一人当たり四分の一が法定相続分で、その半分の妻四分の一、子一人当たり八分の一が遺留分となる。「長男に全て継がせる」と書いても、他の法定相続人は「遺留分減殺請求」が出来る。
遺言を作成する時は「特別受益」や「寄与分」も考慮すべきだ。特別受益は住宅援助進学費用、嫁入り道具など、相続人が特別に利益を受けた場合、その額を相続財産に持ち戻して合算し、改めて分割する制度。一方、寄与分は、被相続人の財産維持や増加に相続人が特別に貢献した場合、それを先渡しし、差し引いた相続財産を改めて分割する。実質的に家業を継いだり、仕事を辞めて介護したケースは認められやすいが、親の面倒を見たという程度では確たる証拠がない限り認められにくい。
「遺言は、あらかじめ特別受益や寄与分を考慮したうえ、遺留分を侵害しない範囲で作成したほうがいい。他の相続人が難癖を付ける口実がなくなり、トラブルを防ぎやすくなります」
ただ、せっかく遺言を作成しても、特別受益や寄与分が記憶違いなどで誤っていたり、親の死亡前に相続人の一人が現金や預金を勝手に引き出してしまうなど、後で、トラブルに発展するケースも。このような時はどう対処すればいいのか。
通常は、相続人同士で「遺産分割協議」を行い、決着しない場合は家庭裁判所へ「調停」を申し立てる。その際、銀行の元帳などの証拠を事前に入手していれば、分割協議や調停もスムーズに進む。
そのほか、昔からよくあるのが、遺言で愛人に「遺贈」する場合のトラブル。愛人に法定相続人としての権利はないが、最近の調停や審判では、本妻と別居して愛人と長く生活を共にしているような場合、「事実婚」として認める傾向にある。この場合、他の法定相続人が団結して異議を唱えても、他の法定相続人の権利を過大に侵害しない範囲で遺贈が認められる。社会的にも事実婚を認める風潮が強くなっているので、今後、同様のケースが増えていく事が予想される。